1発上がりのロマンを求めて/素数大富豪との出会いと今、そしてこれから
この記事は、素数大富豪 Advent Calendar 2017 - Adventar 19日目の記事です。
昨日は、はなぶさんによる形や模様で覚える素数大富豪 - はなぶさんのめもちょーでした。
今年最後の8桁素数日(20171219)を担当させていただきます、もりしーです。
突然ですが、合成数1発上がりってロマンありますよね?
素数大富豪は11枚の手札から素数、合成数を組んで先に手札がなくなった方が勝利ですが、ルール上、1発で上がってしまう可能性があるのです。*1
素数の場合、2、3、5の倍数判定をした上で11枚一気に出したとき、mattyuuさんの調べ*2によりますと、10%強もの確率で上がることができてしまうので、素数大富豪で遊ぼう会in札幌の参加者さん方がこぞって賭けを打つのもわかります。
一方で、1発上がりの合成数は、CPU以外が出すのを見たことがありません。ほとんどの人間が簡単に暗算できる範囲を超えている上に、素因数まで揃えるのは大変です。でも逆にCPUがしばしば出すということは、それなりの確率で何らかの1発上がり合成数が作れるのではないかと予想できるわけです。
1発上がり合成数をいくつか知っていれば、万が一手札にそろった時にこの上ない奇跡をものにできるのではないか?と考えたのです。
1発上がりな上に、芸術点の高い*3合成数なんて、究極のロマンではありませんか!
ということで、11枚のトランプから作ることが可能な1発上がり合成数をいくつか調べてみました。
語呂合わせ編
210593(ニートコックさん)=197*1069(行くな、登録)
「調理師の資格持っているけど就職しない人」のイメージです。
310710(水戸納豆)=2*3*5*10357
気に入っているのでいつか出してみたいです。4枚出しですね。
710710(納豆納豆)=2*5*7*11*13*71
710*1001なので、1001チェックを知っていれば暗算で出すことができます。このタイプの合成数は結構ありそうです。
72843(夏休み)=3*24281(さあ、西にハイチ)
夏休みごろに、「~夏休み」という素数が札幌で流行っていたのをTwitterで見た気がする(当時はまだ参加していませんでした)のですが、夏休み自体は11枚合成数でした!しかも偶数消費型!
886249(ハバロフスク)=7*13*9739
12枚ですがイチオシなのでご容赦ください。1枚引いて揃ったら出しましょう!*4
偶数消費型
8866=2*11*13*31
88664=2^3*11083
46812=2^2*3*47*83
8101211=1231*6581
冪乗
33554432=2^25
2,3,5が3枚と、4が2枚という偏った手札ですがこれは覚えやすいかも
282475249=7^10
7の冪乗で偶数が多く、かつ11枚になるものです。
(素数)^2で作れるものも多くあります。11枚という条件をそろえるにはある程度範囲が限られているのですが、意外とすんなりみつかるものです。
1125721=1061^2
おそらく最小。
1471369=1213^2
なんとなく規則性のありそうな数字列。9枚~12枚で可能。2枚出し最強1213の2乗。
9665881(苦労老後やばい)=3109(佐藤くん)^2
老後への備えはしっかりと。
10621081=3259^2
10を2枚使って桁増やせる上に、四つ子素数の2乗です。見つけた中では最大。
今後、エクセルにまとめたりして活用法を考えたいなと思っているところです。
さて、話は変わりますが、ここからが本題かもしれません。
せっかくなので、素数大富豪に関するエピソードを話したいと思います。長々とした自分語りになってしまうのは恐縮ですが、おそらく後にも先にもない機会だと思うので、こういう人もいるんだな、程度に思って読んでいただければと思います。
素数大富豪に出会う前
子供の頃は「とにかく数字が好きな子」でした。数字に関する理解だけはかなり早かったようです。
小学3、4年生くらいのとき、「名前の文字数で天国地獄大地獄を占う」手遊びを通して、mod 3を計算する方法を自分で編み出し、車のナンバーなどを見ては計算していました。*5当時は奇数偶数の概念をまだ知らなかったので、「mod 3で何か」を通して数字を見ていました。自分の本名の文字数が天国(1 mod 3)であったため、1 mod 3の数字が好きでした。
また、「他と比較して大きな数」が好きでした。「他と比較して」がポイントで、大数のようなむやみやたらに大きい数には関心がなく、何かに振り分けられる有限個の数字のなかで大きいもの(たとえば「出席番号」や「スポーツ大会のゼッケン番号」、「抽選番号」など)で、他の人より大きいものを持つことになぜか執着がありました*6。そして、イベントごとに与えられた数字は、終わってからも必ず覚えていました。
中学生になる頃に他分野(主に音楽)に興味が移ったことや、高校数学は嫌いだったことなどにより、残念ながら数学には縁がありませんでした。
しかし、大学生の頃に、「素数の魅力」に気づき始めます。それまで素数は、数学の授業で少し取り扱った程度で、とりわけ思い入れはなかったのですが、「4桁最大の素数ってなんだろう?」とか、「素数の間隔には何か法則性があるのかな?」など思うようになりました。
とにかく気分を落ち着かせたいときや、何かに夢中になりたいけど何もできなくてもどかしいときは、素数に関する記事をネットサーフィンで見て漁りました。
電卓だけを片手に発見した4桁最大素数9973は今でも大好きな素数です。
素数大富豪との出会い
2016年の暮れに大学の留年が確実になり、何においても自信が持てない時期を過ごしていました。少し気持ちが落ち着きつつあった2017年3月頃、例のごとく素数の記事を漁っていると、あるワードがしきりに目につくようになりました。それが「素数大富豪」です。
とにかくいろんな記事を読んでいたので、何の記事が「素数大富豪」との最初の出会いだったかは覚えていないのですが、かなり初期に読んでいた関連記事のなかには、二世さんの素数大富豪徹底攻略!~ビギナー編~ - にせいの日記や鰺坂もっちょさんの「パッと見素数」に気をつけろ! - アジマティクスなどがあったと思います。当初、なんとなく面白そうなゲームだなと思いつつも、ルールが複雑で、文字情報だけではうまく噛み砕けなかったので、実際にやってみようとは思いませんでした。
しかし、素数大富豪Advent Calendar 2016などの面白い記事を読み進めていくうちに、大会が行われるほどすごいゲームなのかと感心し、「よくわからないけどやってみたい!」という気持ちが強くなりました。
そして、素数大富豪ver3でCPU対戦ができることを知り、初プレイしてみたのが、2017年4月2日。最初の試合の感触は鮮明に覚えています。
CPU初対戦での戦績
試合のログを保存してあったので、当時の心の内を回想し添えたうえで、ここに載せます。
you:+4,+8,+13,+1,+10,+7,+5,+★,+5,+4,+7,
cpu:+2,+9,+9,+3,+11,+6,+3,+6,+8,+2,+8,
you:[4],[13],bad,+13,+7,pass「413って素数なのかな?え、違うの?」
cpu:[6,2,6,9]
you:pass「4枚とかやめてくれよー、パス!」
cpu:[9],[3,*,3]
you:[13]「これなら出せるけど13使っちゃう」
cpu:pass
you:[4,1]「とりあえず41」
cpu:+6,pass
you:[4,7]「え、こんな素数でパス?47!」
cpu:+12,[8,11]
you:[10,13]「これは確か2番目に強いやつだよね。」
cpu:+9,pass
you:[5,7]「とりあえずグロタンで…」
cpu:-
you:[★=9,5,8,7]「9587は知ってる素数だ!やった!」
cpu:lose
--------
なんと、初プレイにして4枚制限(デフォルト)のかなり強いCPUに勝ってしまったのです!!!
当時、覚えていた素数は200以下と2枚出しの強い素数、そして1000台と9000台にいくつか知っている素数がある程度でした。
もちろん上の試合に勝てた直接の理由は自分の手札がよく、CPUの手札が悪かったからだとわかります。次の試合からは、16連敗を喫するのでした...
そして、18試合目で2回目の勝利を挙げます。そのログがこちら。
you:+7,+11,+9,+6,+4,+3,+7,+7,+12,+8,+10,
cpu:+1,+13,+5,+3,+11,+2,+3,+12,+2,+2,+11,
you:pass(なぜかパス。たぶん間違って押した。)
cpu:[2,12],[2,*,2,*,5,3]
you:[8,11]
cpu:pass
you:[9,7,4,3](知ってる9000台素数)
cpu:[3,11,1,11]
you:[6,12,10,7](3の倍数だけ確かめてあとは賭け)
cpu:+5,pass
you:[7]
cpu:lose
--------
知っている9000台素数を出して、それ以上の大きい4枚出しは知らないけど、とりあえず出してみる、という方法で、それが当たれば勝つことができるという程度になっていました。既に、4枚出し戦法の原型が見て取れるのですが、「9000台に知っている素数がいくつか(5~10個程度)あった」という点がこの戦法の確立を後押ししていたようにも思えます。
結局、かなりはまってしまい、徹夜で190試合し、83勝107敗で初日を終えました。強いCPU相手に、初日にしてはなかなかの手応えでした。
「もしかしたら、素数大富豪は得意かもしれない...!」
ここで、幼いころからこだわっていた「他と比較して大きい数字」が素数大富豪とうまく重なることに気づきます。素数大富豪は、親によって定められた枚数において、最終的により大きい素数を出せた方が親を取れます。つまり、私が生来持っている数に対するこだわりを貫くことで、素数大富豪というゲームを有利に進めることができるのです。これほど自分に向いたゲームは他にありません。
試行錯誤しながら大きい素数を少しずつ覚えていき、CPU対戦ではぐんぐんと戦績を伸ばしました。1週間後の4月9日には、50戦で34勝16敗と、驚異的な勝率を記録しています。正直、今やったところでそれ以上の勝率を出せるとは限りません。当時の自分、恐るべし...
大会に出たい!いろんな人と素数大富豪がしたい!
4月の終わりには、先手固定で平均勝率6割くらいは取れるようになり、CPUとの対戦も少しマンネリ化してきたところで、対人戦をしてみたくなりました。
ただ、素数大富豪仲間がいない。これは素数大富豪にはまった誰しもがぶち当たる課題ですね。友人を誘ってみると人によっては少し応じてくれるのですが、なかなかはまってくれない。そもそもたいていの人はやろうともしない。
ちょうどその頃、4月29~30日のニコニコ超会議で素数大富豪のブースが開かれていました。予定があって行けなかったのですが、その前後でキグロさんが出していた対戦動画を毎回楽しみに見ていました。素数判定に一喜一憂したり、各々が持っている知識を楽しそうに話す様子を見て、とても羨ましく思いました。それと同時に、この人たちとなら対等に素数大富豪で遊べるかもしれない、そしてうまくいけば勝てるかもしれない、とも心の奥底では思っていました。MathPower杯での優勝も夢じゃないとひっそりと思い始めていたのでした...。
ちなみに当時は関東に住んでいたので、みらいけんに顔を出そうかとも考えました。しかし7月に迫る春学期の卒論提出に向けて本腰を入れなければならない時期だったこともあり、結局腰が上がりませんでした。
素数大富豪で遊ぼう会in札幌との出会い
5月以降、学業に集中するためCPU対戦をほどほどにし、素数大富豪に関しては4枚7桁のリストアップを始めたことくらいでした。
そして7月になって、二世さんが札幌で「素数大富豪で遊ぼう会」なるものを開催していることを知ります。実家が札幌近郊で、卒業が決まれば実家に戻ることになっていたので、参加できるのを楽しみにしていました。
8月に無事卒業が決まり、9月のはじめに北海道の実家に戻りました。
そして2017年9月11日、待ちに待った素数大富豪in札幌初参加の日です。最初は二世さんと私の2人だけ、途中で人が増えても4人と、人数の少ない回だったのですが、そのかわりじっくりと素数大富豪で遊べた気がしました。「ゴツ美」が生まれ、なぜか東京勢にまでどよめきが波及したのもこの日です。
次の9月19日の回では、10人くらいが集まり、わいわいと楽しい雰囲気で遊びました。その中で、必ずしも数学が得意でない参加者たちが「今日出したい素数」や「面白い語呂合わせの素数」を楽しそうに出していく姿、そして果敢に会心の一撃を狙う姿を目の当たりにして、素数大富豪の魅力のひとつである「誰でも平等に遊べる」ことを初めて実感した回でした。11日目の記事*7で紹介した、「語呂合わせ素数表」の構想はこの日に遡ることができます。
MathPower杯での優勝とそれがもたらしたもの
そして10月8日。私は準々決勝以降もっちょさん、キグロさん、みうらさんの強豪に勝ち抜き、優勝を果たすことができました。
私は、今まで自分のいちばん得意なことは「音楽」だと思っていました。たしかに好きでかつ得意であることには変わりなく、ピアノ、作曲、和楽器など様々なジャンルに挑戦してきましたが、「そこそこ上手い人」のレベルからは何一つ脱却することができませんでした。「人に見せられるレベルじゃないし、かといってそこまで努力するのは苦になる」という壁を乗り越えることができなかったのです。そのため総合大学に進学したのですが、学業もぱっとせず不完全燃焼にとどまる自分に燻っていました。
しかし、素数大富豪は、瞬く間に世界一への道を開いてくれました*8。これが、私にとっての不動の自信につながっています。
そしてMathPower杯での優勝は、自分にとって当初思っていた以上の変化をもたらしました。
そもそも、ブログを始めて今ここに記事を書いているなんて、当時は予想だにしていなかったのです。
きっかけはMathPower翌日の素数大富豪in札幌で、二世さんに「今年も素数大富豪アドベントカレンダー立てるから、記事書いてみない?」とお誘いいただいたことです。当時はまだ、素数大富豪をただ楽しんでいるだけで、「素数大富豪のあれこれを他に発信する」という発想がなかったため、あまり快い返事をした覚えがないのですが、内心では素数大富豪について人に伝えたいことはいっぱいあったので、何事も挑戦だ、と思い10日後の10月19日にはブログを立ち上げていました。「素数大富豪を伝道したい」という思いが生まれたのはこの頃です。
そして優勝してしまった以上、追われる立場です。素数大富豪大会で優勝したい、と夢を掲げる者にも出会い、最近は札幌の参加者のレベルが一段と上がっているように思えます。常連同士だと、1001チェックがもはや当たり前という段階まで来つつあるので、うかうかしていられません。それでもなお、素数大富豪の原点に戻って楽しく遊ぶというスタンスは幅広く受け入れられており、素数大富豪の良さはここにあるのだなと思っております。
また、日曜数学界隈の方々との関わりは何より大きな変化です。先月はせきゅーんさんにオフ会にお呼びいただき、多くの刺激を受けました。もちろん現時点では、「MathPower杯優勝者」という肩書があってこそのものではありますが、今後日曜数学会in札幌でのプレゼンも予定していたりと、「日曜数学会」自体もひとつの活動の場となりそうです。
私は素数大富豪との出会いを通して、「自分が本当に得意なもの」に気づくことができました。何人もの人にここまで影響を与えられる素数大富豪と、それを考案し世に広めたせきゅーんさんには、感謝感激です。
素数大富豪in札幌はほんとに最終回?
そして先週12月13日、二世さん主催による「素数大富豪で遊ぼう会in札幌」は、最終回を迎えました。東京からみうらさんも駆けつけてくださり*9、大盛況で幕を閉じました。私が参加したのは9月からのほんの3分の1に過ぎませんが、素数大富豪の魅力に直に触れることができて、素数大富豪がもっと好きになりました。12月12日の記事素数大富豪で遊ぼう会in札幌のこれまでとこれから - にせいの日記 での二世さんの言葉にあるように、「もっとやりたい」と思う人は多いはずです。もちろん私もその一人です。
素数大富豪自体が魅力あるのはもちろんですが、それが札幌で花開いたのは二世さんの行動あってこそです。終わってしまうのは、寂しいですよね?
ここで朗報です。
素数大富豪で遊ぼう会in札幌は、来年も継続して開催することが決定しました!!!
それに際しまして、1月より、幹事を私もりしーが引き継ぐことになりましたので、ここにて報告させていただきます。
二世さんも可能な限り参加してくださるそうです。幹事できる人が2人になったので、有事のフォローも可能です。
今後も、素数大富豪愛好者の方々により楽しんでもらえるような場を提供し続けたいと思い、立候補させていただきました。
新しい企画も少しずつ構想しています。今からとても楽しみです!
そして、気になる日程は...
2018年1月7日(日)13:00~17:00 @ノースエイム小会議室
となります!!
17時以降も、希望があれば場所を移動してやる予定です。
二世さん、これまでありがとうございました!
来年度の素数大富豪で遊ぼう会in札幌も、よろしくお願い致します!
ここまで長い記事をお読みいただきありがとうございました。
さて明日は、nasuyaさんによる、素数大富豪に興じる人々: 今日も一日のびのびとです。
え、我々のことですか?????
お楽しみに!
*1:公式ルール参照。ただし大会によっては場に出す枚数を制限することもある。
*2:素数大富豪アドベントカレンダー2016 素数大富豪〜会心の一撃の成功確率〜 - mattyuuの数学ネタ集より
*3:素数大富豪に芸術点はありません。ただ、見てて面白い、美しい、と感じる出し方に対して、「芸術点が高い」と言われることが時々あります。これも素数大富豪の魅力のひとつです。
*4:ハバロフスク数 - 素数交響曲第2番もご一緒に参照ください!笑
*5:「天国」が1 mod 3、「地獄」が2 mod 3、「大地獄」が0 mod 3です。
*6:そういう点では、苗字がマ行でよかったなと思っています笑
*7:語呂合わせ素数で広がる世界 - 素数交響曲第2番 参照