MATHPOWER杯2017 データ分析編

年が明けました。来週末に迫るせきゅーん杯を前に、2016年から2017年にかけての素数大富豪の変化を突き詰めたいと思い、正月三が日を利用してMATHPOWER杯の分析を行いました。

 

なお、この記事は一昨年12月5日の二世さんによる記事

nisei.hatenablog.com

のデータを参照・引用し、MATHPOWER杯の2016年と2017年の比較をさせていただきます。

二世さんの方法に倣って、「生放送された試合のデータ」を分析しました。是非とも2つの記事をタブで並べて見比べてみてください。

 

なお、分析データのなかにもりしー本人のデータも出てきますが、本記事ではあくまで客観的な取扱いと分析をしております。ご容赦ください。

 

基本情報

・カードを配ってから勝敗がつくまでを「1勝負」、次のトーナメントに進む人が決まるまでを「1試合」と呼びます。

・データの対象とした放送試合は以下の通りです。(プレイヤーは敬称略)

1回戦:3試合・6勝負

 せきゅーんvsタカタ先生

 はなぶvs堀口社長

 数学のお兄さんvsコロちゃんぬ

2回戦:2試合・5勝負

 せきゅーんvsみうら

 風巻vs鰺坂もっちょ

準々決勝:3試合・7勝負

 はなぶvsみうら

 もりしーvs鰺坂もっちょ

 キグロvsあられ

準決勝:2試合・5勝負

 みうらvsかっち

 キグロvsもりしー

決勝:1試合・4勝負

 みうらvsもりしー

以上11試合・27勝負

 

出される枚数の変化

2016年のデータでは、1~2回戦では1枚出しと2枚出しが大半だったのが、準決勝以降、3枚出し以上の割合がおよそ半分にまで増加しました。

2017年のデータでは、やや簡略化して、n枚出しが場に出た回数を求め、その割合をグラフに表しました。前年と直接の比較にはなりませんが、傾向の変化はつかめると思います。

表1 出された枚数ごとの回数と合成数、ペナルティの回数(2017)

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図1 出された枚数ごとの割合(2017)

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1回戦が1枚出し、2枚出し中心なのは同じですが、2回戦以降、およそ7割が3枚出し以上となっており、前年に比べて場に出す枚数が明らかに増加しています*1。準決勝以降は1枚出しがゼロで、決勝は8割が3枚出し以上、4枚出しの割合もかなり高くなります。

 

合成数出しは4.9%で前年とほぼ変化なし、ペナルティは6.4%で、前年よりやや減少しています。指数表記出しなどが追加され、合成数出しのハードルは下がりましたが、本気勝負になると意外と合成数を狙う人は少ないのかもしれません*2

 

出された数について

こちらは、前年との違いがもっとも分かりやすく表れたところだったので、2016年のデータに新たに2017年のデータを加えた表を作りました。

表2 数字別・出された回数(2016及び2017)

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※文字が小さいので、クリックして拡大をお勧めします。

まず、出される数の偏りがかなり減りました。2016年は1位の「5」が22回も出されたのに対し、2017年は9回出された「1213」が最多です。上位5つを除いた数が全て4回以内に収まっており、1回のみ出された数がかなり多いのが今年の特徴です。

素数のレパートリーはこの1年で確実に増えたといえるでしょう。

 

2016年と2017年を比較して、大きく順位を上げた数字と大きく順位を下げた数字をいくつかピックアップします。

 

ランクアップ↑↑

131011(1回→5回)、121013(0回→4回)

以前は少なかった3枚出しが、より広く浸透したことによるのでしょう。3枚6桁の素数は、総じて多く出されました。

 

443(0回→4回)

3枚出し以上の偶数消費型素数が研究された結果が出ています。

 

4121213(0回→3回)

2016年ではほとんど見られなかった4枚出しがしばしばみられるようになっています。下一桁に偶数を使うことができないため、枚数を増やして出すことも偶数消費の手段のひとつとなっています。

 

1729(0回→3回)

ラマヌジャン革命の追加によるものです。

 

256(0回→2回)

合成数の指数表記出しの追加によるものです。以前は128以上の2の冪が素数大富豪では出すことができませんでしたが、指数表記出しができるようになったことにより偶数消費のしやすい2の冪が出されやすくなりました。256特有の強さについてはせきゅーんさんも言及されています*3

 

81041、81043、81049(0回→各1回)

8104Xは偶数消費型かつ4枚5桁の四つ子素数なので、素数大富豪では出しやすい数となります。最近は四つ子素数の研究が進んでいるので、それが実践にも表れてきています。

 

ランクダウン↓↓

2(9回→1回)、4(7回→2回)、5(22回→4回)、23(5回→0回)、29(5回→0回)、61(9回→0回)、89(16回→3回)、811(10回→3回)

3枚出し以上の偶数消費型の素数合成数がよく使われるようになったために、相対的に1枚出しや2枚出しの偶数消費型が使われる機会は減少したとみられます。また、特に2は合成数出しでの価値が上がったため、なおさら2を使う素数は出されにくくなっていると思われます。

 

1013(5回→1回)

2枚出しで2番目に強い素数ですが、2017年は3枚出しで1回出されたのみで、実質0回になっています。これは2枚出しの頻度が大きく減少したことによるでしょう。2枚出しが出されたらすぐに1213などで返して手番をとり、得意の3枚出しや4枚出しに持っていくという戦法が多くみられました。

 

プレイヤーごとの集計

出された数をプレイヤーごとに集計すると以下のようになりました。なお、今回は上位4名に加え、前年との比較のために鰺坂もっちょ氏を加えています。

表3 プレイヤー別の出した数(2017)

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*「特殊」は、グロタンカット、ラマヌジャン革命、ジョーカー1枚出しを指す。

プレイヤーごとに放送試合数にかなり偏りがあったため、一概に比較するのは難しいですが、それぞれのプレイヤーの傾向はなんとなくつかめるのではと思います。

 

全体の傾向としては、やはり前年に比べて出した回数に対する出した数の種類が増加しています。

合成数出しはかなり少なめです。基本的に、各々の戦略に合わせて知っている素数を出すという戦法が中心になっています。同時に、グロタンカットやラマヌジャン革命もそこまで頻繁には出てきません。

出した枚数ごとを見てみると、全員に共通して3枚出しが最も多いです。これは全放送試合の集計でも同様だったので、3枚出しの浸透は、2017年の大きな特徴といえるでしょう。

4枚出し以上を駆使するプレイヤーは、現状多くはありません。この中では、特にみうら氏が多彩な4枚出しを繰り広げているのがわかります。

 

人ごとに見ると、以下のような傾向が見えてきます。

もりしー・・・3枚出しを最もよく使い、時折4枚出しも行う

みうら氏・・・偶数消費型の4枚出しが特徴的

キグロ氏・・・2枚出しのラリーや偶数消費型3枚出しなど幅広い戦法

かっち氏・・・知っている素数こそ少ないと思われるが、抜群の計算力で素数判定を行い、合成数も駆使しながら勝ち上がってきた。

鰺坂もっちょ氏・・・61211などを中心に3枚出しを主戦法とする

 

まとめ

以上の分析から、大まかに以下のようにまとめられます。

・2016年は2枚出し最盛期、上位プレイヤーが時折3枚出しを使用

・2017年は3枚出し最盛期、上位プレイヤーが時折4枚出しを使用

・2016年から2017年にかけて、出される数のレパートリーが大きく増加した

・3枚以上偶数消費型素数が多く使われるようになった

・一部の2の冪を除く合成数はあまり出されない

 

ここまでMATHPOWER杯の2016年と2017年を比較してきましたが、2018年は素数大富豪界がどのように動くのでしょうか。覚えやすい素数の研究がもっと進むのか。4枚出しの定着と5枚出し以上の開拓がみられるのか。それとも合成数出しが活発に行われるようになるのか...。注目のポイントです。

 

このあたりの最新の動向は、先月の素数大富豪アドベントカレンダー2017から垣間見ることができます。素数大富豪に関する研究の最先端を見ることができるので、まだ読んでない方は、是非とも目を通してみてください。

adventar.org

 

まずは1月14日にせきゅーん杯がありますね。出場選手のみなさん、よろしくお願いします!!

*1:放送試合に出ている人は、経験者が占める割合が高くなる傾向にあると思うので、それが特に2回戦でのレベルの上昇につながっているのではと考えます。放送試合外では、2回戦は初心者もまだ多く残っているはずです。

*2:合成数出しを狙っていたのに出せなかったという裏話もあるようです。

*3:MATHPOWER杯2017での戦い5選 - INTEGERS より