せきゅーん杯2018 データ分析編
年明けすぐに、MATH POWER杯のデータ分析記事を書きましたが、出される素数は1年でかなり多様になってきていることがわかりました。
MATH POWER2017から3か月。この間に、MATH POWERを見て素数大富豪を始めたという人も少なからず参入してくる中、さらに傾向は変わったのでしょうか。
結論から言うと、かなり変わりました。
オープンなイベントの中で行われ、初心者も少なからず参加されるMATH POWER杯と違い、せきゅーん杯は16人という限られた人数の参加でした(しかも強者揃い)。そして、場に出せる枚数の制限があるなど、戦略の立てられる範囲が限られていたことなどから、強者同士が「制限の範囲内で最善の戦略をとろうと対策した」ことが、このせきゅーん杯を特徴づける1つの要因になっていたと考えます。
MATH POWER杯とせきゅーん杯の違い
戦略の立て方に影響があったと思われる違いは以下の通りです*1。
MATH POWER杯 | せきゅーん杯 | |
参加申し込み | 当日予約 | 事前予約(先着) |
対戦形式 | 全戦トーナメント(シード有) | 予選リーグ及び決勝トーナメント |
制限時間 | 1手につき1分(決勝は2分) | 3分の持ち時間制、切れたら1手10秒 |
先手の決め方 | 最初はじゃんけん、2戦目からは負けた方が先手 | 最初はじゃんけん、以降交代 |
場の枚数の制限 | なし | 7枚 |
上がりの制限 | なし | グロタンカット、ラマヌジャン革命、ジョーカー1枚出しはペナルティ |
基本情報
・カードを配ってから勝敗がつくまでを1勝負、同一メンバーで連続して行われる勝負の集合を1試合とする。
・データの対象とした試合は以下の通りです*2(プレイヤーは敬称略)。
予選(決勝トーナメント進出決定戦):1試合・1勝負
キグロvsふみ川まうりvs貧乏神博士
準々決勝:1試合・3勝負
カステラvsもりしー
準決勝:2試合・5勝負
鰺坂もっちょvsカステラ
キグロvsマモ
決勝:1試合・2勝負
マモvsカステラ
計5試合・11勝負
今回は、データの残る試合数が少ないことや、1試合で出される手の数がかなり少なくなっていることなどにより、統計的に厳密な分析ができる状況とはかけ離れています。集計方法やデータの紹介方法もかなり変えたので、項目によってはMATH POWERのデータとの直接の比較が難しいですがご了承ください。
出された枚数について
MATH POWER杯2017では、3枚出しが最も多く出されていましたが、せきゅーん杯では以下のようになりました。
表1 出された枚数ごとの回数(せきゅーん杯2018)
ご覧の通り、4枚出しが一番多いのです。(もちろん、予選や準々決勝の他の試合も含めればこの限りではありません)
そして、5枚出し以上にも少なからず挑戦している様子が伺えます。さらに決勝に限って言えば、7手中6手が5枚出し以上です。
出された数について
せきゅーん杯では、同じ数が複数回出されることは稀でした。どんな数が出されたのかを、回数が多い順に紹介します*3。
3回 57
2回 2、121013、131011、9131011、12121211
1回 3、8、11、13、89、109、127、421、523、557、641、743、773、823、857、877、929、983、1312、1729、2861、3461、3469、5869、6427、6553、8543、8627、8629、10513、12109、15641、15643、21313、48889、74413、94613、104107、131311、246689、1256887、1310611、4101011、6511013、9121213、13101211、131012911、412111211、862410121、1213131313、1313121011
グロタンカットが堂々たる1位ですが、なんとすべてカステラ素数王による手です。カステラ素数王は、せきゅーん杯出場の中で唯一のグロタンカッターなのではないでしょうか(?)。
9131011が2回出されているように、今回は4枚7桁を見る機会が多くて、今まで推してきた身としては嬉しい限りです。
それにしても、大きい素数ばかりですね...
今回に特徴的な傾向としては、1桁カードは1桁カード同士で、絵札は絵札同士で組み合わせる出し方が圧倒的に多かった気がしました。「受けの手」と「決めの手」をしっかり区別する戦法を取った人が多かったのではと考えられます。
プレイヤーごとの集計
上位4名のプレイヤーについて、それぞれが出した数を枚数ごとにソートしたのが以下になります*4。
表2 プレイヤー別の出した数(せきゅーん杯2018)
カステラ素数王・・・素数を幅広く知っているが、2枚出しや3枚出しも意外と積極的に出す。グロタンカッター。
マモ氏・・・1手目に出す突然の6枚出しや7枚出しが特徴的。これによって何回も試合を取っている。
鰺坂もっちょ氏・・・以前に比べ、4枚出しを多く出すようになった。
キグロ氏・・・受けの手と決めの手を分けて手札を組んでいる。
以上のデータから、今回特記しておきたい戦法の鍵となる要素及び、素数大富豪の今後について検討してみました。
グロタンカットの新たな可能性
カステラ素数王によるグロタンカットがかなり特徴的なのですが、準決勝2勝負目をご覧ください。
表3 せきゅーん杯2018 準決勝2勝負目の数譜
1手目でいきなりグロタンカットを出しています。準々決勝でも同様の出し方をしているため、明らかに戦略的です。
グロタンカットを1手目で出すメリットについて考えました。
・絵札が少ないなど、手札に決め手が欠けるときに、グロタンカットの前後で2回ドローできるのを利用して、手番を失わずに手札を補充している。
グロタンカットは、1桁カード2枚で作れる数です。大きい素数を知っていれば、偶数が多くても影響は少ないので、奇数を消費するデメリットより1桁カードを消費して2桁カードが来るのに賭けるメリットの方が大きいのでしょう。
「手番を失わずに」というのも大きなポイントです。手札が悪い時にしばしば行われる故意のペナルティは、手番が相手に移ってしまうのが難点で、結果的に勝負を自分のペースに持っていきづらくなることが多いのですが、グロタンカットは、自分の手番のまま進められます。
枚数制限を逆に活用した例
マモ氏による特徴的な出し方なのですが、1桁カード(の偶数)が多いときに、残りの4枚で素数を組んだ上で、1桁カードで作れる7枚出しを出して相手のミスを誘う戦法になります。相手がそれより大きい素数を出せなければ、手番が再び自分に回ってくるので残りの4枚を出してすぐに上がることができます。仮に、最初の7枚が素数でなかったとしても、手札の補充になります。
今回は、枚数制限があったことにより、その戦略に気づきやすくなったのでしょうか。
多枚出しの研究が進んでいる
4枚出しや、5枚出し以上に至るまで、出せる素数の研究がかなり進んでいます。ツイッタ―やブログなどで素数表を公開されている方もいます。組み合わせがある程度少なかった3枚出しまでと違い、4枚出し以上は不可算級なので、個人による推し素数の方向性が多様になってくるでしょう。みんなで推し素数を自慢しあいましょう。笑
一方合成数出しは、遊びのときによく出されるようになった割には、試合での活用はまだ少ない印象です。狙っていたけど出せなかったパターンも多そうですね。
より強いCPUと対戦できるようになりました!
素数大富豪CPU対戦のブラウザ版を作られたnishimura氏により、現在の素数大富豪界の流れに合わせて、8枚出しまで対応したCPUが実装されました!
8枚出し対応だけでなく、CPUの思考方法も改良し、より強くなっています。従来通り、5枚出しより少ない設定もできますので、初心者でも遊べます。腕を試したい方はぜひ!
上級者向け(強いCPU)
2枚出し制限にも対応(従来型のCPU)
初めての方はver.1からの対戦をお勧めします。
まとめ
2018年は素数大富豪界がどのように動くのでしょうか。覚えやすい素数の研究がもっと進むのか。4枚出しの定着と5枚出し以上の開拓がみられるのか。それとも合成数出しが活発に行われるようになるのか...。注目のポイントです。
MATHPOWER杯2017 データ分析編 - 素数交響曲第2番
今のところですが、
・覚えやすい素数の研究⇒○言わずもがな。
・4枚出しの定着⇒○4枚出しを駆使するプレイヤーは格段に増えました。
・5枚出し以上の開拓⇒○5枚出しの研究が今アツいです。
・合成数出し⇒△現状どうしても、試合で出すにはハードルが高くなってしまう。それでもせきゅーん杯では面白い合成数出しがいくつか見られたので、今後に期待です。
以上、せきゅーん杯2018の分析記事でした。